アイワを吸収したソニーの失敗

アイワかたりべ


私がアイワを辞めたのが2001年7月末日。

その時点で、アイワはいずれソニーに吸収合併されることになるだろう、という話は出ていました。
それも噂レベルではなく、実務的な内容を伴った話として聞こえてきていました。

設計を中心として技術者を200名程度、営業・総務などは数名。
私が所属していた情報機器事業部は事業として残らない予定なので、設計にいない限り残れないだろう、と。
かつて所属していたサービス部も修理はソニーのサービスが引き継ぐからほぼほぼ残れないだろう、と。

じゃあ、どのみち残れないじゃん。
なんとか最後まで残ってソニーに吸収されたら、新しい展開が待っているかも、という淡い期待も持てない感じ。

そういう背景もあって辞めたわけです。

まあ、辞め時としては間違っていなかったな、と思いました。

辞めてちょうど半年、2002年2月にソニー株式会社の完全子会社となることが発表され、10月に実施されました。
池之端の本社ビルも売却されました。

その後、ふと思い立って本社ビルを見に行きましたが、まったく関係のない別な会社になっているのを見て、心底悲しくなりました。

このビルから見る桜満開の不忍池が好きでした。

で、辞めた後の私のことはひとまず置いといて。

吸収されたあとのアイワについてはどうだったのか。

吸収合併後のアイワ

ソニーに取り込まれた後も、ゼネラルオーディオを作って売る、という基本スタンスは変わらず、ソニーの製品と競合してしまうわけですが、ソニーが作らない、作れないような尖った製品づくりをしていく、という方針が発表されました。

売れるかどうかわからないようなベンチャーライクな商品はなかなかソニーでは稟議が通らないので、アイワブランドで出していく、という趣旨のようでした。

けど、果たしてそんなに自由な開発環境が与えられていたのか、が気になります。

実際、そんなにインパクトのある製品を見た気がしません。

結局、ソニーの最廉価版のラインに新しくなったアイワのロゴをつけて販売していただけのような気がしますがどうでしょう?

言ってることとやってることが違う、的な?

私、大文字AIWAと小文字aiwaの製品はまだいくつか所有しています。
いまだに現役で活躍してくれている製品もあります。

が、波波アイワのロゴがついた製品は一台も持ってません。
買った試しがない。

だって、欲しいと思うものが無いし。

何のインパクトも届きませんでした。

で、そのうちなくなってしまった。
私も新しい人生で忙しく、ウォッチしていなかったこともありますが。
その後の私がウォッチしていたPC系の製品からは撤退してしまいましたからね~。

それでもHDDレコーダーやAVCHDビデオカメラのような尖った製品が出てくれば、必然的に目に留まったはず。(この時期はPanasonicが飛び抜けていましたね)

結局ソニーって、アイワの持つ数々の特許が欲しかっただけなんじゃないかと勘ぐってしまいます。

子会社化してたった3年で製品開発終了って。

波波ロゴだって、あれでアイワってわかります?読めます?

わざとあんまりわからないようにしたんじゃなかろうかと勘ぐってしまいます。
いや、真摯に子会社を救済し、競合しない道筋をつけようとしてくれていたんだと思いたい。

でも、結果的には失敗に終わりました。

 

もうひとつ、この記事で書きたかった重大な失敗を挙げておきたいと思います。

それは海外戦略です。

海外戦略における失敗

日本国内では押しも押されぬ超一流企業なソニーではありますが、世界的に見ると、多くの国でソニーよりアイワのほうが知名度が高かった。
特に90年代のヨーロッパや中東ではかなりの人気を博していました。

一説には「アイワ」の響きがいいらしい。
アラビア語で「はい」、中国語で「愛華(中華愛)」のようにポジティブなフレーズに感じるそうです。

そういう背景とともに、品質面でも優れた性能を発揮する日本製品の高い人気もあった。

その状況を自分の目で見てきた体験を共有したいと思います。

93年に結婚した際、新婚旅行でドイツ・スイス・フランスを旅してきました。
バブル時代ですからね。
・・・安いパックツアーですが。(^^;

ドイツのローテンブルグという小さな街での散策の際に小さな電気店(おそらく街で唯一の電器屋)のショーウインドウを覗くと、ソニーのWalkmanが3台、アイワのCasetteBoyは2台と(他社が2~3台)、ヘッドホンステレオの数でこそ負けていましたが、ラジカセ2台など少なくとも4台が飾られていて、一社員としてずいぶん誇らしく思ったものです。

下の写真は回していたビデオカメラの映像から切り出したものです。ガイドさんについてぞろぞろ歩いているときに通りかかった電気屋ですので、あんまり長く立ち止まっていられなかったので、数秒ざっと撮った感じでちょっとボケていますが、証拠としては十分でしょうか。

1993年(平成5年)ですが、カセットボーイはまだ大文字AIWAロゴですね。
CDラジカセは小文字aiwaロゴになっています。

ショーウィンドウ全体。背景の映り込みが激しいですが、右半分をパイオニアのカーステレオとフルサイズコンポ(T-1100Sですねこれは)が占めています。さすが老舗ステレオメーカー。
その手前中央に黒のミニコンポ、下段中央の黒いのも判別できないがミニコンポ。
その両サイドにアイワのCDラジカセとコンパクトラジカセ。
左のインナーイヤーヘッドホンも真ん中2つはケースの形状から見てアイワでしょう。
その上の左のミニスピーカーはSC-A30っぽい(不確定ですが発売時期的には合致)。

最前列は先のヘッドホンステレオで、AIWA、SONY以外はPanasonicとBEETLE(WKM150)だけ。
センターの売れ筋エリアをアイワが独占していることがおわかりいただけることでしょう。

別に日本製品専門店というわけではないんですが、この時代、いかに日本製が強かったかが肌で感じられた瞬間でした。とりわけアイワは安くて高品質でしたから、欧州市場を席捲していたわけで。

そんなブランドを手に入れたんですから、最大限に活用すればよかったのに、と思います。

当面浸透している小文字aiwaのロゴのまま海外活動を続けていれば、やがて中身はソニーなんだってよ、ってことになり、自然に人気を移し替えしていけただろうと思います。
ブランド力をまんま受け継ぐことができたはず。

それをスパッと切り捨てて国内の安売りブランドにしてしまった。

もったいないことです。

プライドが許さなかったのかも知れないし、常に上から目線で下に見ているから活用しようなどという発想すら出てこなかったのかも。いや、確かに国内では10倍くらいの差でした。

いまでもYouTube見てるとロシアやインドなどいろんな国のユーザーがアイワ製品を鳴らしながら熱く語っている動画に出くわします。何言ってるのかはわかりませんが。(^^;

ソニーの海外での知名度は、・・部外者の私にはわかりません。

でも現在の主流はそもそも日本ではなくて中国や韓国なんだろうなぁ。なんともはや。

でもソニーは好きなのよ

最後に。

文中、ソニーに苦言を呈する発言をいくつかしましたが、それは私がアイワを愛していたからであり、トータルで見て、ソニーは素晴らしい親会社であったと感じています。

そもそも、カセットに関してアイワは、子会社でありながらソニーの競合他社であり続けたわけです。

海外での人気もさることながら、国内においても真っ向から勝負を仕掛け、あるときは新技術で、あるときは世界最小で、ソニーを上回る製品をいくつもリリースしてきました。

そこに対して親会社だから制限をかけるだとか、技術を奪うといったさもしい行動に出るようなこともなく、泰然と受けて立つ横綱のような存在であり続けました。

圧力があったとしたら、VTR生産の際にVHSをOEMしながらベータ陣営についていたときくらいでしょうか。

アイワが消滅した時期はソニーにとっても苦しい時期であったわけで、ソニーとしても精一杯の対応だったのだろうと思います。

そんなわけでワタクシ、ソニーは好きな会社です。
親父が買ってきた、アポロに乗ったというTC-50に触れた6歳のときから。

CF-1990 ICF-5900 TC-K777 ST-J75 PS-X700 WM-D6 ・・・現役当時愛用しました! 素敵ですソニー。

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