アイワにふたつのSX-M100

スピーカー


アイワにはSX-M100という同じ型番のスピーカーが2機種あります。

親が一緒なのに同姓同名?
そんなことあるの?と思ってしまいますが、あるんです!

マークIIとかVer2.0とかではなく、まったく別の製品です。

ふたつのSX-M100

ひとつは1988~91年に存在したStrasserブランドで販売されたミニコンポのサラウンド用リアスピーカーとして用意された、パンチンググリル採用の2ウェイバスレフ型スピーカーです。
名付けて「Strasser M100」。

もうひとつは小文字aiwaになった91年以降の1999年に製造・販売されたMDミニコンポ「XR-MD100」に付属する、涼しげな青みを帯びたサランネットが特徴的な2ウェイバスレフ型スピーカーです。
名付けて「BlueNet M100」。

もし単体で販売していたらえらいことになってしまうでしょうけど、片方はミニコンポの付属スピーカーですので、事なきを得たというか実害はなかったようです。

でも、商品企画部のチョンボだろうなぁ。(^^;

それはさておき、ふたつのSX-M100、どちらも音がいいんです。

それぞれのSX-M100、詳しく見ていきましょう。

Strasser版 SX-M100

ヤフオクの値段の上がりかたを見ていると、世間的に音がいいと認知されているのはStrasser版 M100のようです。
バブル期の製品であり見た目にもきっちり作られている印象を受けます。

ダークブラウンな木目調のエンクロージャーは背面まで木目で統一されており、仕上りが美しいだけでなくリアへの設置の自由度を考慮し壁掛け金具まで用意されています。

リスナーのリア側に柔軟に設置できることを意識してでしょう、ユニット前面はパンチンググリルで覆われており、周囲をヘアライン仕上げのアルミフレームが押さえています。サランネットはありません。

これが、リア用、、ね~。
特にそう言われなければ、モニタースピーカーのような風貌です。

ってことはフロント用はどんなスピーカー?
と調べてみると、高級ミニコンポDS-F1に付属のSX-SF1、またDS-F2付属のSX-SF2になるかと思われます。なるほど。

ドルビーサラウンド/プロロジックが登場し、高品質なマルチチャンネルの再生のために真剣に開発に取り組んでいた時代の製品ということになります。

SX-M100(Strasser版)主な仕様
形式:2ウェイ バスレフ型
ユニット:
・12cmPPコーンウーハー
・5cmコーンツィーター
インピーダンス:16Ω
瞬間最大入力:50W
サイズ:W160×H255×D160mm
重さ 2.5kg

BlueNet版 SX-M100

一方、BlueNet M100はバブル崩壊後の製品。
1999年発売のMDコンポ XR-MD100の付属スピーカーとして登場しています。

普及価格帯のコンポ用スピーカーであり、フロントバッフルは木ですが銀のプラスチックで前面が覆われています。

サイドや天面底面は明るい木目調ですが、裏面はむき出しのパーチクルボードに軽く黒い塗装を吹いただけだし、スピーカーケーブルは直出し。

サランネットは爽やかな色合いではありますが、やはりプラスチック(ポリスチレン樹脂)の上に張られています。

コストダウンがありありと伝わってくる外観です。

しかしながらユニットを見ると、Strasser版M100と比べても特に遜色はなく、むしろウーハーのダイアフラムには進化が感じられます。

実際に音を聴いてみるとこのチープな見た目からは想像できない音が飛び出てくるんです。
音は見た目ではないんです。

SX-M100(BlueNet版)主な仕様
形式:2ウェイ バスレフ型
ユニット:
・13cm PPコーンウーハー
・6cmコーンツィーター
インピーダンス:6Ω
瞬間最大入力:30W
周波数特性:65~20,000Hz
サイズ:W160×H280×D220mm
重さ:2.8Kg (1本)
カラー
・ボックス:ベージュ系木目
・フロントパネル:シルバー
・サランネット:グレー系ブルー

どっちのほうがいぃ音なの?

プラスチックの場合、ある程度肉厚でないとスピーカーの振動でビリつく心配があるわけですが、それはあくまで一定程度の大音量を出した場合であり、日本の多くの家庭では出せる音に限りがありますので、作りが粗雑でなければ心配ありません。

我が家も安普請の建売住宅であり、ちょっと気分が乗って大きな音を出そうもんなら、近所迷惑以前に嫁さんや娘に怒られる状況です。

そのような環境における私の耳での所感は以下のとおり。

特に低域に違いあり。

BlueNet M100はダイアフラムに高圧縮コーンを採用していることが功を奏し、低音にパンチがありながらも高い分解能が感じられます。

それとですね、バッフル板がプラスチックというのは見た目はチープなのですが、案外音的には悪くないのかも知れません。

それをいちばん強く感じたのが、SC-47です。
例のアイデンのユニットAF-50Pを採用した名器の誉れ高いスピーカーです。
SC-47ではユニットをラジカセと同じように直接プラスチック製のフロントバッフルにネジ止め固定している構造ですが、同じユニットで木製バッフルを採用したSC-45より間違いなく音がいい。

SC-47以降のアイワスピーカーを見ていくと、プラバッフルを採用した機種の多いこと多いこと。
気づいていたのかも知れません。アイワ設計陣。
なんたって、ラジカセの筐体設計には一日の長がありますからね。

ワタクシのいちばんのお気に入りであるSX-LFD5もプラスチックに直接ユニットを固定してこそいませんが、フロントバッフル全体をABS樹脂の飾り板で覆っています。
このSX-LFD5をまじまじと聴いたことが引き金になって、気がつけば当アイワ博物館を立ち上げることになってますし。

アイワ以外でもKENWOODには似たような面構えのがけっこうありますね。
あちらの技術者も感づいたのでは?

おっと、SX-M100以外の機種の話で盛り上がり過ぎました。
まぁでも、そんな経験も踏まえて考えると、BlueNet M100の銀プラのフロントバッフルは実は、案外効果的なのかも知れません。
プラスチック=適度な損失を持つ素材でしかも安価、ということなのかも。

木=いい音。

ワタクシも含め多くのオーディオファンの心理に深く深く深く刷り込まれた”まやかし”かも知れませんよ。
プラシーボ効果やプライミング効果と言ってもいいでしょう。

楽器レベルで職人が1台1台削り組み磨きあげるなら話は別でしょうけど。
合板やパーチクルボードにそんなものを求めてはいけません。
それなら金型プレスしたABS樹脂のほうが密度が高く均一で狂いがない、ということなんでしょう。

さて。

Strasser M100は硬めの紙コーンに樹脂系の素材を含有した塗料を塗布しているようで、適度な損失を持たせることで自然な低音を目指したものと思われます。

しかしその一方で、リアスピーカーという性格上、5.1chなどでサブウーハーとの組み合わせになる可能性も高く、低音をそれほど欲張る必要はない、という割り切りも感じられます。
4chの場合でも、フロントスピーカーに低音域は任せればいいという考え方もあるでしょう。

単体で見ると、やはり低域に物足りなさを感じる方が多いのではないでしょうか。

高域に関してはどちらもコーンツィーターなので、傾向は同じです。

よってワタクシの耳には、BlueNet M100のほうがバランスの取れたいい音である、と感じます。

ま、どちらがいいと思うかは、人それぞれです。
オーディオは感性ですから。

入手性は?

どちらもヤフオクをウォッチしているとたまに出品され、数千円でゲットできます。

安く手に入ってしまうので、ついつい複数台買ってしまいました。(^^;

両方買って聴き比べてみると楽しいですよ。
Strasser M100のほうが手に入りにくいかも。

BlueNet M100は、単品売りもありますが、ミニコンポXR-MD100セットでの出品もよく見かけます。
やはり安くていい音が出るということでよく売れたようです。
ので丸ごと買ってしまえば入手は楽。送料が高くつきますが。

こんな手軽にいい音が聴けるスピーカーが1000円から高くても5000円とかで手に入ってしまうんですから、何万円も出して高いの買うことなんてないですよ。

ちなみに、BlueNet M100と同じユニット構成と思われる兄弟機スピーカーがいくつかあり、同じ傾向の音が出ると考えられます。
SX-M85やSX-M500などが該当します。
SX-M710も近そうな感じ。SX-M35もかな?

実際にSX-M85はBlueNet M100と瓜二つな音であることを確認済みです。
サランネットを外したときの見た目もそっくりです。
(サランネットは濃紺になります。)

そこまで含めて探せば、手に入らないってことはないんじゃないかなぁ。

ということで、ふたつのSX-M100。
同姓同名。なれど見た目も性格も少し異なる。

果たしてどちらを手元に残したいと思うか。

悩むこと請け合い、です。

その程度にはいい音ですから。

空気録音(YouTube)

最後に。
空気録音してYouTubeに動画をアップしました。
これで聴き比べればある程度わかるかと思います。

【BlueNet M100】

【Strasser M100】

【BlueNet M100 フロア設置編】

やはりフロアにゆったりと設置すると、スケールアップして鳴ってくれます。

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