前に5volt.jp の記事中で、何気なく「SC-1ってあったのかなぁ」と書きました。
「SC」は初期のアイワスピーカーの型番です。
アイワフリークな方なら、SC-62, SC-61, SC-51, SC-47, SC-45とかマイペース用スピーカー、SC-E80, SC-E60, SC-E22あたりまでは馴染みがあるかと思います。
たとえばSC-E22はマイペース5の各機種がS-P22, S-C22, S-R22, AD-L22など、全部22なので敢えて揃えただけのようですが。
これらのスピーカーは70年代後半に相次いでリリースされた製品。
アイワがカセットオーディオの一流メーカーとして世間に認知され、さらにミニコンポの域を越えたクオリティの高い音を出すことが店員さんを中心としたクチコミで広まった時期と重なり、売れに売れたおかげで、40年が過ぎた令和の現在でもヤフオクで容易に手にすることができます。
じゃ、それより前は?あった?なかった?
「それより前」の調査
マイクロホンの調査をした経験からすると、基本的に開発順に番号を振っているようなので、スピーカーも同じだと考えられます。
テープレコーダー系はステレオになったりラジオがついたり小型化したりするたびに派生した番号に飛んだり(飛ばなかったり)しますが、スピーカーではそれはあまりなさそうです。
むしろマイクのほうがダイナミック、コンデンサー、ワイヤレス、と派生していたくらいです。変化はそれ以下なのかな、と思います。
つまりはマイクの調査をしながら、ま、あったんだろうな、とは想像していました。
ただ、アイワのスピーカーは、単体で販売されることはほとんどなく、付属品またはオプション(別売)という扱いのものがほとんど。
それゆえ、あまり日の目を見ないというか。
でも、今になって中古市場で評価されてきているのは、これまたアイワフリークな方ならご存知のとおりです。
ダイナミックマイクをマイクの主流に押し上げたアイワです。
原理がよく似ているスピーカーでも一定の品質を保てるのは当然のことなんです。
もうちょっと資金繰りが潤沢な会社だったなら、スピーカーの世界でも一花咲かせるだけの技術力があったように思います。
もっとも潤沢だったらあの時点では潰れなかっただろうけど。
いいものを安く売っちゃったからね~。
もうちょい利幅を取っていれば。
さて、
マイクの過去を調べていく中で、偶然目に留まった製品カタログがあります。
SC-26 SC-25
1976年4月発行 ステレオ総合カタログ
調査したかった年代よりも新しいものだし、マイクとはあまり関連性がないので・・・と思いながらも裏面を見ると、
Airchech200のスピーカー部に「SC-26」、system-4001のスピーカー部には「SC-25」の文字があるではないですか!
しばらくマイクの調査はそっちのけで見入ってしまいました。
Syncrate20と30のスピーカーはどうなのよ~!!
おそらくSC-22, SC-23あたりではないかと思いますが、Syncrateという製品の性格上、システムアップとかいう難しい概念を取り去り、かんたんにいい音が聴けて録音もできる、というコンセプトを活かす意味からあくまでAS-20, AS-30の付属スピーカーという立場を取り、シンプルに示したかったのではないかと思います。
先ほども書きましたが、アイワのスピーカーは付属品またはオプション(別売)という扱いのものが多いんです。
ってことは、スピーカーがついているような製品をウォッチしていけば、自然と過去のスピーカーにも出会えるのではないか。
いままでそういう視点では見ていませんでしたので、これはちょっと気合を入れて調べてみようと思いました。
この視点を踏まえて探してみると、さっそく見つかりました。
SC-25 SC-24
SYSTEM STEREOカタログ system3055 , system4001
SC-25 SC-24
やはり、少し遡っただけで、スピーカーの型番がでてきました。
これだとこんがらがる人もいたのでしょうか。まいたのでしょう、きっと。
SC-24はリア用スピーカーなんですね。
当時、4chステレオがブームになりかかっていて、どのメーカーもこぞって対応製品をリリースしていました。
結局、現在に至るまで、さまざまなサラウンドシステムが生まれては消えていきましたが、2chステレオに置き換わるところまではいきませんね。
今後も難しいでしょう、きっと。
もう少し遡ると、
SC-18
STEREO SYSTEMカタログ TPR-3050 TPR-4001
SC-18
ステレオ黎明期のスピーカーらしいデザイン、色合いになってきました。
さらに、
SC-17 SC-15 SC-14 SC-10
TPR-3001 米国向けカタログ
これの裏面に
キターーーーーーっ!
SC-10, SC-14, SC-15, SC-17 一気に4機種も掲載されていました。
おもて面の写真はSC-17のようですね。
さらに未開のジャングルを進む。
昔の雑誌をめくって探してみる。
SC-10
スイングジャーナル 1970年7月臨時増刊「最新ステレオ・プラン」
366ページにアイワの広告がありました。
右下のほうに「専用スピーカ《SC-10》¥12,800」の文字。
SC-10は1970年発売のカセットレシーバー TPR-2001のために作られたオプション・スピーカー、ということがわかりました。
また、スイングジャーナル 1970年10月号
の広告を見ると、
SC-10は茶色のサランネットで真ん中下にAIWAのロゴ、さらにアルミの縁取りがされたスピーカーとなっていることがわかります。
ということで、SC-10まではたどり着きました。
この記事を公開した2021年12月の時点ではSC-10より前の確たる情報は見つかりませんでしたが、4ヶ月ほど経過した2022年4月、追記可能な情報に行き当たります。
SC-9
日本初のFMラジオ付きカセットカーステレオ「TPR-2010」を入手しました。
これに付いてきた取扱説明書を見ると、
付属スピーカーの型番が「SC-9」であることが判明しました。
TPR-2010は1970年発売。
ですが、SC-9は、TP-1042などとも共通で使われていたスピーカーです。
ですので、もう少し前から存在していた可能性はあります。
それ以前の候補たち
しかし、それより過去になると、なかなか確たる情報に行き当たりません。
しかし、候補となる製品はいくつか散見されました。
候補1
1968年、アイワ初となるステレオカセットデッキ「TP-1009」を発売していますが、同時期にこれと組み合わせるアンプとスピーカーを販売していました。
スイングジャーナル 1968年12月号212ページ掲載の広告にその姿が写っていますが、型番は不明です。
左スピーカーの右上、右スピーカーの左上にマイクロゴとAIWAロゴが配置された、おそらく茶色のサランネットでアルミの縁取りがされたスピーカーとなっています。
候補2
1968年(67年かも)、録音ができるカセットカーステレオ「TP-1015」を発売しています。
これには車のリアウインドウに設置するように傾斜を持たせたスピーカーが付属しています。
候補3
1967年、ステレオ録音・再生が可能でアンプ内蔵、分離・一体化可能なスピーカーを装備したコンパクトカセットレコーダ「TP-1004」を発売しています。
スピーカーが分離可能ということは、型番が与えられていても不思議ではありません。
このあたりが SC-8, SC-7, SC-6 あたりなのではないかな?といったところです。
ここからまたしばらく情報が途切れ、
さらに4年遡ったところに脈あり情報あり。
おまえが「SC-1」なのか?
1963年、ラジオを搭載しスピーカーを分離・一体化できるポータブル電蓄「P-171」を発売しています。
モノクロテレビ「19T-22」のカタログの裏面に載っていました。
時期的に横電源ロゴを使いはじめる少し前にあたります。
愛興電機産業株式会社からアイワ株式会社に商号変更し、マイク以外の製品を本格的に手がけるようになったのが、この頃。
スピーカーをはじめて作った時期として最も可能性の高い時期になろうかと思います。
今のところ、P-171が行き当たった情報の中で最も古いので、これがSC-1なのではないかな、と現時点では考えています。
ラジオ用のロッドアンテナを左スピーカーに装備した、楕円形ユニットのスピーカーが栄えある第一号(仮)かも~。
2023年2月4日追記:
日本初のカートリッジ式テープレコーダー「TP-707」のオプションとして用意されたACアダプタ内蔵外部スピーカーの型番が「SC-4」であることがわかりました。
TP-707は1964年2月発売。
同時か少し遅れたタイミングで発売されたものと考えられますので、1964年内と思われます。
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