さて。
そろそろ手持ちの製品を紹介していこうと思います。
アイワ博物館なんで。
で、何を最初に持ってこようかな、っとしばらくの間考えていましたが、決まりました。
わたくし、アイワから「提案賞」なるものをいただいたことがあります。
テレホンカードを2枚、もらいました。
どんな提案をしたのかもあわせて、記しておきたいと思います。
1983年、新入社員研修の際、1年or2年先輩の商品企画部の人と会う機会があり、新作の「HS-P5」を見せながらどう思うか尋ねられました。
当時は、世界初のオートリバース機能搭載ヘッドホンステレオ「HS-P2」が爆発的ヒットとなっていました。
オートリバースで連続的に途切れることなく音楽が聴ける。
いちいちテープをひっくり返す手間もない。
加えてポップでキャッチーな色使いのカラバリが若者受けしました。
TP-S30/CS-J1そしてHS-F1/P1は小型テレコTP-25と同じカセットメカを使いつつバリエーションを拡充しながら、型番も含め方向性を模索しているようなさ迷っているような感じに見えていたんですが、実はその裏で着々と新型メカを開発していたんですね~。
入社前年のことでしたが、なかなかインパクトあるリリースでした。
メカニカルなリバース機構を見事な設計であのサイズのボディに収めてあり、その後サービス部に配属され修理に携わりましたが、サービス性はさほど悪くありませんでした。
とはいえ、まだまだ厚みがあり、ポケットに入れるのはちょっと無理がある一回り大きなサイズ感でした。
その次に出た「HS-P3」はマイナーチェンジ。
外装をアルミにしたりFMトランスミッターを内蔵したり。
でも大きさはほぼ同じです。
となれば次の機種は「もっと薄く」「ポケットに入る」が求められていたのでしょう。
「HS-P5」は薄くて持ちやすく、ポケットに入るサイズに仕上がっていました。
それを発売直前(直後かも)に見せられたわけです。
前代未聞の10色展開。
秋葉原駅近くの街頭に出て社員が製品アピールを兼ねて、どの色が好き?と販促物を配りながらアンケートを取り、各色の概ねの生産量を決めるためのデータ収集を行ったりと、かなりの意気込みで臨んだ製品。
小型薄型でも安っぽく見えないアルミ外装にプラスチックながら銀メッキが施された大きめの操作ボタン。
世界最小・最軽量、最薄23.8mmのヘッドホンステレオを実現するために内蔵マイクや録音ボタン、マイクジャックなど録音に必要な機能が入るスペースはすべて削減し、再生専用機として設計しています。電池蓋はプラスチック。Tリールのギヤが表側から見えるところまで薄型化した努力が伺えます。
同期たちは「エエなあ」(大阪のヤツが多かった。急にたくさん売れたので関西のサービスマンが特に不足していた)「でもオートリバースがなぃなあ」という声が多かった。
自分もそこは同感だったし、商品企画部の人も、今回はオートリバースは断念したけど次の機種には入れたい、と話していました。
そこで、自分からもうひとつ意見を出しました。
せっかくポケットに入るようになったのだから、ポケットに入れたまま操作できたら便利なんじゃないでしょうか。
例えば男性の場合、ワイシャツのポケットに入れて上から操作できたら、夏でも手ぶらで通勤できますよね。
(当時、手ぶらorセカンドバッグ一丁はちょっとした流行りだった)
ちょうどインナーイヤーヘッドホンが普及しはじめていたので、ヘッドホンジャックも上にあれば、最短で耳まで届いて邪魔に感じないと思います。
という主旨のことを言いました。
まぁなんとなくそんな近未来を考えてはいたんですよね。
同時期にソニーの縦長のフルロジックのちょっとでかいウォークマンなんかも見ていましたし。
商品企画部の人は「んー、なるほどー。できるかどうか検討してみましょう」というあっさりした感じでした。
ちょっと無茶なこと言ったかな?突拍子もなかったかな?と、その時は思いましたが。
しかし、HS-P5のマイナーチェンジでカセットテープと同じ形状のラジオアダプターをテープの代わりに装着することでラジオが聴ける「HS-P6」を挟んでおよそ1年後に登場したのが、世界的に有名になった「HS-P7」でした。
なぜそんな世界的に有名になったのか。
1985年公開のロバート・ゼメキス監督作品、製作総指揮が一世を風靡したスティーヴン・スピルバーグ、と来ればお分かりでしょう。そう、「バック・トゥ・ザ・フューチャー」です。
バック・トゥ・ザ・フューチャーのストーリー中、30年前にタイムスリップした際に物語の流れの上で重要なアイテムとして「HS-P7」が登場したんです!
ハリウッド映画に超~目立つ形で出演した格好です。
現地では「HS-P02MkII」という型番でした。
これまた現地では「HS-P02」っていう名前だったくだんの「HS-P2」がアメリカにおいても大ヒットしていたため、験を担げとばかりに型番を引き継いだ形になっています。
バルカン星からきた宇宙人ダースベイダーに扮したマーティが、ヴァン・ヘイレンの曲を最大音量で鳴らして父ジョージを拷問にかけ、母ロレインに告白するように仕向けるあのシーンで活躍したのが、HS-P7シルバーでした。
映画公開当時アイワ社内でも、うちの製品がバック・トゥ・ザ・フューチャーで使われたらしいよ、という情報が駆け巡りました。
ちょうどデートで見に行く予定になっていたので、渡りに船、とばかりにまだ竣工して1年ほどの有楽町マリオンの映画館で待ち合わせ、最新設備のスクリーンの前に座りました。
そのシーンが訪れたとき、ヴァン・ヘイレンが鳴り響くより前に、ひとりのけ反って喜ぶ不審者になったのは言うまでもありません。
アメリカ映画それも超話題作においてまさかまさかの【AIWA】のロゴが大写しになるなんて。
アイワの社員が心穏やかに観られるはずがない。
1955年。
テープレコーダーはオープンリールで、ポータブル型も存在していましたがかなり大型でアタッシュケースみたいなものでした。
手の中の装置から爆音が出るのは宇宙的だったことでしょう。
1985年。
P7の縦位置のボタンをピストルの引き金のように操作する姿は1985年の若者にとっても斬新に見えただろうと思います。
「提案賞」をいただいたのはそのあとです。
それまでCS-J1を使っていましたが、嬉しくって自分でもワインレッドのP7を買って、ワイシャツの胸ポケットに入れて使いはじめました。
本当はダビング用に2台目のビデオデッキ(HR-D725)を買いたくて資金を貯めていたときでしたが仕方ない、寄り道です。
インナーイヤーのヘッドホンは自分でコードを50cmくらいの長さに詰めて。
ワイシャツの胸ポケットに入れて使えましたが重さがあるので、走るときは胸ポケットを押さえながらになってしまうのは致しかたないところでしたね。
これまた中のカセットメカは高い技術力を感じるものでした。
リバースボタンが再生ボタンと一体化してより洗練された操作系になり、デザイン的にもすっきりしました。
考えてみれば、提案からわずか1年でこのメカを設計して販売まで持ってくるというのは、凄まじい開発力ですよね。
でもいつしかどこかにいってしまいました、ワインレッドのP7。捨ててはいないはずと思ってたんですが。ここに載せようと改めて探してもやはり見つからない。
その後あらためて、映画で使われたシルバーを手に入れています。
そうなるとやってみたくなるのが、ヴァン・ヘイレンのカセットを入れて鳴らしてみること。
もちろん使うカセットは映画と同じピンストライプのmaxell UD。
ちゃんとインデックスシールも貼って。
やってみました!
バック・トゥ・ザ・フューチャーで使われたカセットテープに関する考察
これでいつでもバック・トゥ・ザ・フューチャーの世界に入り込めるってもんです。
ということで、P7とBTTFと私、な話でした。
コメント
1979年入社 岩手工場で新製品の試作設計の評価担当をしておりました。初のオートリバース機のHS-P2,F2.J2シリーズやUHF受信のHS-UV9,ヘッドホンラジオHR-S2,おもにアメリカ向けの
カーステレオ、CDプレーヤーSONY D-50をそのまま内蔵したコンポST-W202など岩手で生産した製品を設計、生産工程技術者などの方たちと話し合い生産にたどり着くまで大変苦労したことを思い出しました。
赤石さん、こんにちは!
4年先輩ですね。
学生時代にCS-J1を買ったのですが、直後にHS-J2が発売され、AMも受信できるし何よりオートリバースってことで地団駄を踏みました。
こっちはアルミ外装でカッコいいのさ、と負け惜しみ。
このオートリバースで一気にソニーを逆転した感がありましたが、カセット蓋がポップな色づかいのプラスチックというのがネックでしたね。
3シリーズからはアルミに戻りました。
設計側の苦労は大変なものだっただろうと拝察いたします。
他社よりいいものを安く作るのがアイワでしたから。
でもそのおかげで、聴けば、触れば良さがわかる。
CMを打たなくても口コミで売れる。
営業マンも店頭に並べれば店員が売ってくれる。
店頭でも目立つ場所に置かせてもらえる。
そういう好循環があったと思います。
はじめまして、
最近HS-P7を入手し、修理にチャレンジしています。メカは問題がすくないようで清掃で動作するようになりましたが、音声は右Chの音が小さくモーターのブラシノイズ?が聞こえます。電解コンデンサの交換ですかね?
あとメッキの剥がれをきれいにしたいです。
https://share.icloud.com/photos/073Cun5ipvSFE7ts4UFXfBUNA
https://share.icloud.com/photos/07aQah_3u2Cn0iioQkPvWjZjg
山元さん、こんにちは。
前者は確かに電解コンデンサの可能性がありますね。
後者は私も試してみたいと思いつつ実践はできていないんですが、鏡になる塗料で検索するとよさそうなものがいくつか出てきます。
ちばさん、ご返信ありがとうございます。
小型の電解コンデンサは最近はスマホなどの積層セラミックに置き換わっており、パーツが見つかりませんね。
ネットで47μFと220μFが見つかりましたので、まずはあるものから置き換えて対応したいと思います。
メッキ塗料は筆塗りが難しそうで模型用のコンプレッサーを眺めています。まずは剥がれている部分をサンディングして仮でなにか塗っておくつもりです。
https://share.icloud.com/photos/0afpGKt6VnisaLOGeCDQDvAAw
確かに、勝手に平らに延びてくれる塗料ならいいですけど、ムラになったり筆跡が残ったりしがちですね。
模型用のエアガン、私も欲しいですがなかなか手が回らないです。